PSYCHOLOGY FIELD NOTES

こころのクセを、
そっと覗く。

心理学は、「なぜ人はそう感じ、そう動くのか」を実験と観察で確かめていく学問です。日常のちょっとした行動のクセにも、名前のついた法則が隠れています。ここでは、知っていると誰かに話したくなる心理効果を、メリット・デメリットつきの標本として集めました。

前頭前野 扁桃体 海馬
Fig. 01 — 意思決定を担う前頭前野、感情の中枢である扁桃体、記憶を司る海馬

COLLECTION — No.01–08

心理効果、標本箱。

日常に潜む8つの心理効果を、標本ラベルつきで並べました。それぞれのメリットとデメリットもセットで。

No.01

ツァイガルニク効果ZEIGARNIK EFFECT

達成できた物事より、途中でやめた物事の方が記憶に残りやすいという現象。レストランのウェイターが未払いの注文をよく覚えていることに、ロシアの心理学者ツァイガルニクが気づいたのが発見のきっかけです。

メリット

作業をあえて途中で止めると、再開のハードルが下がり集中が続きやすい。

デメリット

未完了のタスクが頭から離れず、他のことに集中しづらくなることがある。

No.02

カリギュラ効果FORBIDDEN FRUIT EFFECT

「禁止されるほど、かえってやりたくなる」心理。上映禁止になった映画『カリギュラ』が話題を呼んだことが名前の由来とされています。

メリット

「数量限定」「期間限定」の演出でうまく使えば、興味関心を高められる。

デメリット

悪用されると、不要な消費や危険な行動へあおられるリスクがある。

No.03

吊り橋効果MISATTRIBUTION OF AROUSAL

恐怖や緊張によるドキドキを、恋愛感情のときめきと勘違いしてしまう現象。1974年のダットンとアロンの吊り橋実験がもとになっています。

メリット

ドキドキを共有する体験は、相手への好意を持つきっかけになりやすい。

デメリット

恐怖による興奮を好意と誤解しているだけで、相性とは無関係なことも。

No.04

バーナム効果BARNUM EFFECT

誰にでも当てはまる曖昧な言葉を、「自分だけに向けられた真実」だと感じてしまう心理。占いや性格診断がよく当たると感じる理由のひとつです。

メリット

診断結果をきっかけに、自分の性格や気持ちを見つめ直すことができる。

デメリット

曖昧な言葉を「当たっている」と錯覚し、悪質な商法に利用されやすい。

No.05

単純接触効果MERE EXPOSURE EFFECT

繰り返し接するほど、対象への好感度が上がっていく現象。心理学者ザイオンスが1968年に示した、シンプルながら強力な法則です。

メリット

何度も顔を合わせるだけで、自然と好感を持たれやすくなる。

デメリット

中身の伴わない接触回数だけでは信頼は深まらず、しつこく感じられることも。

No.06

ダニング=クルーガー効果DUNNING-KRUGER EFFECT

能力の低い人ほど自分を過大評価しやすいという1999年の研究結果。自信のグラフは、根拠のない自信の山→現実に気づく谷→経験を積んで緩やかに上昇、という形を描きます。

メリット

初心者が過度に萎縮せず、新しいことに挑戦しやすくなる。

デメリット

実力とのズレに気づかず、成長の機会や周囲との信頼を逃すことがある。

No.07

確証バイアスCONFIRMATION BIAS

自分の考えに合う情報ばかりを無意識に集めてしまい、都合の悪い情報は見過ごしてしまう傾向のこと。

メリット

情報処理の手間が省け、素早い意思決定ができる。

デメリット

都合の良い情報だけを集めてしまい、判断を誤りやすくなる。

No.08

ハロー効果HALO EFFECT

ある一つの目立つ特徴に引っ張られて、全体の評価まで良く(あるいは悪く)見えてしまう現象。心理学者ソーンダイクが1920年に報告しました。

メリット

第一印象が良いと他の面も好意的に見られ、関係のスタートがスムーズに。

デメリット

肩書きや見た目だけで中身を判断してしまい、不公正な評価につながる。

生理的欲求 安全の欲求 社会的欲求 承認欲求 自己実現

FIG. 02

欲求は、5階建て。
マズローの欲求階層説

アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の欲求には段階があり、下の階層が満たされるほど上の欲求が芽生えると考えました。生命を守る「生理的欲求」を土台に、頂点の「自己実現欲求」までピラミッド状に積み上がっています。

ただし後年の研究では、必ずしも下から順番通りに満たされるわけではないという指摘もあります。あくまで欲求を整理するための一つの見取り図として読むのがおすすめです。

意識 前意識 無意識

FIG. 03

見えている自分は、
ほんの一角。

精神分析の創始者ジークムント・フロイトは、こころを「意識」「前意識」「無意識」の3層で捉えました。海面から顔を出しているのは自覚できる意識の部分だけで、その下にはもっと大きな無意識の領域が広がっている──そんなたとえで語られます。

この氷山の図は、フロイトの理論を分かりやすく伝えるために後世に広まった通称「氷山モデル」で、フロイト自身が描いたものではありません。

TRY THIS

今日から試せる、小さな心理テクニック。

フット・イン・ザ・ドア

小さなお願いから始めて信頼を積み重ねると、少しずつ大きな依頼も通りやすくなる交渉術です。

ミラーリング

相手の姿勢や話すペースにさりげなく合わせるだけで、無意識の親近感が生まれやすくなります。

リフレーミング

同じ出来事も「失敗」ではなく「学び」と言い換えるだけで、感情の受け止め方が変わります。